■殺伐として100■
1 灯り
その灯火はヒトを表す
例えば、熱情のような
例えば、怒りのような
例えば、流れる血の温かさのような
2 爪
さあ、おいで
こっちには甘いお菓子があるよ
暖かいベッドもあるよ
……爪が鋭いって?
気にするなよ
別に君を食べるためのものじゃあないから
3 病
まるで病のようだわ
一度発症したら二度と治らない
少しずつ身体を蝕んで
私は人間でなくなるの
4 いのち
この身に背負えるのはわずかなもの。
だけど、守りたいものばかり増える。
だから、自分の命は背負えない。
5 罪と罰
そして、罪を犯す者に罰を与えよ。
しかし、罰を与える者も罪を犯す。
ならば、罰を与える者にも罰を与えよ。
さらに、罪を犯さずの者にも罰を与えよ。
そうしたら、損をするのは1人だけ。
6 欠片
ばらばらになったモノを集めたら、あなたになりますか?
集めて、混ぜたらあなたになりますか?
混ぜて、繋ぎ合わせたらあなたになりますか?
繋ぎ合わせて、その後どうすればあなたになりますか?
7 返り血
返り血を浴びて死んだ男がいたそうだ。
その男は夜魔を殺し続け、その血の毒で死んだそうだ。
そんな人間がクラシカルマインドにはごまんといるそうだ。
8 枷
足にかけられた先の見えない枷を引っ張る。
枷の先はずるずると姿を現す。
その先には狼の首輪に繋がっていた。
枷に繋がれてたヒトが食べられたのは言うまでもない。
9 黒猫
黒猫はあるヒトの一生を眺めた。
孤児で
ゆがんだ大人になって
ヒトに騙されて
殺された。
今日も黒猫はそこにいた。
10 キセキ
生まれてきた奇跡。
生きてきた軌跡。
死して鬼籍に入る。
一生はキセキに満ちている。
11 宵
宵になると、月が眼を覚ます。
淡く冷たい光を放ち、世界を照らす。
その嬌艶な姿に見とれていると
月があざけ笑うようにこちらを見た。
12 届かない
手を伸ばしても届かないのなら
何かを踏み台にすればいい。
モノでも
過去でも
人間でも
13 犬
じゃあ、犬より怖いものってある?
あるよ。狼
狼? どうして?
だって、犬は自分の身を守るためにヒトを噛むけど、狼は自分の腹を満たすためにヒトを噛むんだよ
14 嘘
嘘をつくと、心がざわつく。
どうして皆気付かない?
俺は人間じゃないんだ。
だからもう、嘘をつかせないでくれ。
15 カラ
そこから始まるものは
からっぽの君に希望を与えるはず
だから、焦らないで
君が目覚めるまで、俺がそばにいるから。
16 悪魔祓い
とうとう悪魔扱いか。
あんな雑魚と一緒にされるとはなぁ。
だけど、俺は悪魔じゃないから
そんな奴呼んだって意味ねぇよ。
17 裏表
例えるなら裏と表
彼の影を僕が担う
決して僕が表になることはない
彼を殺さない限り
18 失う
もう失うものが何もないヒトは
何をするでもなく彷徨うしかない。
自分の身体も亡くしてしまったから。
19 愛なき
愛なき者は
なのかもしれない。
20 不確かなもの
目の前にいる君は、本物なのか?
21 硝子
硝子はまた人を傷つけた。
硝子の愛する者は目の前で怯えていた。
硝子はそっとその手の存在を呪った。
硝子の手はガラスで出来ていた。
22 コイン
それじゃあいくよ?
……はい、裏でした。
残念、君の人生はここまでだ。
ちなみに、これどっちも裏なんだ。
23 赤い傘
赤い傘を持つ少女がいた。
少女は雨のように降ってくる血で汚れないために傘を差していた。
だけど、血は傘で防げても、生臭いにおいは防げなかった。
24 片目
右目の景色は繁華街の夜景を映し出す。
左目の景色はアンデッドが彷徨う街の夜景。
はて? どちらの目が見えないんだっけ?
25 遠雷
神が怒る。
轟々と怒りは天を走り、雲に紛れ機会を窺う。
そして、怒りは地上へ真っさかさま落ちていく。
夏の夜の遠雷だった。
26 消せない
少女はいつまでも壁を擦っていた。
だけど、壁の色は消えない。
少女は手を真っ赤にして落としていた。
少女の手の傷から溢れる限り、赤い色は落ちなかった。
27 泪
流すはずのない目から泪が溢れていく。
彼女が悲しんでいるのだろうか。
彼女にあげた目が
泪を流しているのだろうか。
28 予兆
わずかな変化に気づくことができても
それを避けることができなければ
わざわざ予兆を教えてやった意味がない。
29 抱き締める
この腕に包んだ彼女は
とても小さくて
とても愛おしかった。
今はもういない人を静かに想う。
30 接触
若い旅人が森に迷いこんだ。
疲労も限界に達し、旅人はかすむ目で前を見ていた。
「大丈夫ですか?」
ふと、旅人に声がかけられる。
振り向くと、牧師が心配そうに旅人を見ていた。
「あぁ、助けてください。迷ってしまって、疲れたんです」
それを聞いた牧師は哀愁の声で言った。
「それは大変だ。今、楽にしてあげましょう」
旅人は助かったと目を閉じた。
けれども、旅人が目を覚ますことはなかった。
牧師に化けた夜魔の長に出会ったばかりに……。
31 路上
寝そべって、空を見上げる。
洗濯ものがすぐ乾くほど、晴れ晴れとしている。
例え、敗戦宣言がされた日であったとしても、
空は青い。
32 叫び
毎朝、同じ時間に隣の家から女の叫び声が聞こえていた。
とうとう我慢できなくなっり、隣へ文句を言いに行った。
だけど、そこに人は住んではいなかった。
女の声は目覚まし時計だった。
33 ヘテロクロミア
そりゃあ、うちの族長のことか?
34 接触
あの世界の者に接触したのか!
どうだった? 彼らはどんな姿をしていたの?
…………ヒトの姿をしていなかった。
35 日常
銃を撃つ。
ヒトを殺す。
常に命を狙われている。
36 非日常
学校へ行く。
友達とたわいない会話で盛り上がる。
温かい食事を食べる。
37 灰
灰になった君は
風にさらわれ、空高く舞った。
手を伸ばしても
灰は指の間をすり抜けていった。
38 曖昧
私は白と黒以外の色は嫌い。
だって、曖昧なんだもの。
39 マフラー
ありがとう、君のおかげで願いが叶ったよ。
君が編んでくれたマフラーで
君を殺すのが夢だったんだ。
40 生きろ
そう叫ぶしかできなかった。
こうなったらお前らに任せるしかない。
崩れ行く廃墟の中で
仲間が一人逝った。
41 怠惰
ねぇ、いつまで寝てるの?
もう朝だよ。
ねぇ、起きてよ。
……どうして、目を開けて寝てるの?
42 医者
この世で一番危険なのは多量の知識を摂取した者だ。
一度中毒になってしまうと、
医者ですら、さじを投げる。
43 不信
私が最も信用しないものは、他人の言葉よ。
他人の心の中は私には見えないから。
44 コーヒー
流れるニュースはどれも暗い話。
コーヒーを淹れた若者はふと黒い水面に目を向け、
そして口に入れることなく流しに捨てた。
45 真実
真実は得てして目には見えないものである。
そして虚構とは得てして目に見えるものである。
46 蜃気楼
揺れるその姿に何度触れたいと願ったか。
揺れるあの場所に何度手を伸ばしたか。
そんな私を、あなたはそうやって遠くから見つめるだけなのね。
47 影
影は意思を持ってはならない。
影は主を庇ってはならない。
影は平面から出てきてはならない。
だから、影は最高の傍観者だ。
48 軍
反抗するならいつだって抜けて構わない。
なぜなら、ここは賛同者の集まりだからな。
49 ジョーカー
裏切り者は、初めから誰の味方もしない。
ジョーカーが唯一信じるのは
自らに秘めたこの最強の力のみ。
50 腕
抱きしめるその腕の温かさに
私はこっそり涙を流したの。
人の温かさを知るためには
人に触れなければ分からないことにやっと気がついたの。
51 アルビノ
ある者は彼らを非人間的と非難した。
ある者は彼らを美しいと賞賛した。
しかし、アルビノの本音を理解できる者は
誰一人存在しなかった。
52 魔女
決して彼女らは自らをそう呼ぼうとはしない。
彼女らは、人間の個人差と言うものを良く理解していたから。
53 鴉
科学の国では、鴉は邪魔者扱いされていた。
だから人間たちは気付かなかった。
鴉が復讐を目論んでいることなんて。
54 ニセモノ
あの私も、その私も、全てニセモノ。
もちろん、この私もニセモノ。
本当の私は誰にも触れられない場所にいる。
あなた如きに見せるまでもない。
55 泥酔
酔ったフリして本当は全て解っていた。
君が僕の恋人じゃないことに。
君としたことの全ても。
56 秘密
内緒だと言われたけれど、
そう言われると喋っちゃうのが人ってものよね。
だから言ってやったのよ。
あなたが一番愛している人にね。
57 苛立ち
この涙はあなたのために流したんじゃない。
無力な自分を恥じて、悔しく思ったからよ。
あなたが向ける苛立ちの眼差しさえ、今の私には通用しない。
58 烙印
そうして熱く焼かれた鉄の印が押された。
59 銃口
男を貫いたその凶器は、続けて罪深き女を向いた。
恐怖に見開く瞳。ひどく歪む口元。乱れる髪。
銃口はじっと見つめながら、引き金を待った。
60 やすらぎ
目が覚めた女は、自らの手を見つめる。
そして、後悔した。
愛していたあの人と憎むべきあの女を一緒に逝かせたことに。