「読みきり」



 毎日通っているはずの河川敷。家に帰るのには少し遠回りだけど、それでもここを歩いてしまう。

 あなたが好きだと言った場所だから。

 川はいつものように穏やかに流れてて、学校帰りの小学生が走ってて、少し先の鉄橋にはローカルな2両編成の電車がゆったり渡る。

 どれも初めて見る景色。

 毎日見てるはずなのに、まるで違う世界みたい。
 ……あなたが隣にいないから?
 それだけで、私の世界は色を変えた。風を感じない。笑い声も聞こえない。
 私はどうすればよかったの?

 どうして、って言えばよかった?

 行かないで、って言えばよかった?

 私だけを、見てほしかった。


 話すんじゃなかった。紹介するんじゃなかった。
 あの日からあの人は私を見なくなった。
 目線の先には、私の親友の姿。


 急に歩けなくなった。なんだか私があのひとから離れていくように感じて。本当はあのひとが私から離れていくのに。

 後ろから走ってくる音が聞こえた。


 まさか


 ゆっくり振り返る。そこには息を切らしたあなたが……
「――!!」
 おどかすように風が強く舞った。
 あなたの形をした幻は、風に連れ去られた。
 ……あぁ……
 やっと涙がでた。
 強がって意地を張っていたから、あなたの前で泣くことが出来なかった。

 このままどこか遠くへ消えてしまいたい。

 明日なんか来なければいいのに。

 時間が止まればいいのに、さかのぼれればいいのに。

 誰にも言えないこの気持ち。
 昇華させるにはまだ時間がかかる。
 もう振り返らない。振り返っても意味はない。

 期待するだけ無駄なんだ。

 灰色の太陽が川の向こうに去っていく。
 世界は私を無視して進んでいくんだ。

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